0人が本棚に入れています
本棚に追加
「あーさーだーぞー!起きろー!ヴェルナー!!」
名前を呼ぶトーンが変わった……いや、違うこれは夢じゃない。
この声の主はリキだ。大声で起こしにかかっているらしい。朝一番でこれはつらい。
「お、起きた……でも頭痛い……」
「よっしゃ、朝飯だ!行こうぜ!」
「ちょっ……」
散々な目覚めで体調は最悪だったが、食堂に並ぶ食事は最後に立ち寄った港――すなわち今はヴェルナの故郷で仕入れた食材を使っているそうで、すでにだいぶ離れただろうにいつもと変わらない味がそこにあり、いい意味で少し変な感じだ。
「やぁ、昨日きた新入りって君かい?」
食事を終え、部屋に戻る途中でこう話しかけてきたのはすらりとした長身の男性。頭に巻いた緑のバンダナから茶の長髪を流し、全体的に海賊らしからぬ爽やかで落ち着いた印象を受けるが、頬に施された大きな刺青がその印象にアクセントを付していた。
「あっ、はい……」
「ふぅん……」
すると彼はヴェルナを観察するようにじっと見回した。
「レイヴもまた面白いのを拾ってきたねぇ。君、名前は?」
「えっ、ヴェルナ=グラウコスです。」
「…ヴェルナね。俺は副船長のシルバリッド=ハーヴェイ。よろしく。そうだ、この後暇かい?ちょっと話がしたいんだけど。」
「えっと…、はい、たぶん……」
「そ、じゃあ後で談話室においで。じゃ、またね。」
それだけ言うと彼は去っていった。
「おいおい、あれ副船長じゃん。何しでかしたんだよ。」
リキがつんつん小突いてきた。しかしまるで心当たりがない。
「よくわかんないけど……ドンマイ。」
「ドンマイって、えっ、何それどういうこと!?」
リクが何やら物騒な言葉を残して二人はさっさと部屋へ戻っていった。
「やあ、よく来たね。」
談話室へ向かうと、彼はすでに一角で待っていた。
「あの、副船長、話って……」
「ああ、そんな堅い話じゃないよ。あと気軽にシルバって呼んでくれていいから。」
「え、いや、でも…」
いいからいいから、と席をすすめる。戸惑いながらも席につくと、シルバは二人分の珈琲を淹れ、それから話し始めた。
「どこから話そうか。まずは……そうさね、なんで海賊なんてなろうと思ったんだい?」
「それは――」
「その様子だとレイヴにホイホイされたわけだね?…ああ、気にすることはないよ。うちのメンバーって割とそんな感じだから。」
上手く言葉にできず戸惑うヴェルナだったがシルバがすっかり拾ってくれた。ひとまず安心して話を続ける。
最初のコメントを投稿しよう!