第一章

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 <2>  フィルターぎりぎりまで吸った煙草を投げ捨てると、辺りはもとの暗闇に戻った。  大深度地下に埋設された、地下鉄の線路――  湿った空気が、全身にまとわりつく。  見えるものなど何一つない。  感じるのは、コンクリの放つ冷気。  そして微かな気流の動きと、遠く魔獣がうなっているような風の音のみ――  レールの上に両足を乗せた男――  「無食(ムジキ) 拓(タク)」は、軽く深呼吸をするように両手を広げた。 「――来る」  低く、呟く。  その言葉に呼応するかのように、遠く、魔獣のうなり声が強まった。  止まることを知らず、それはどんどんと近づいてくる。  徐々に強く、鼓膜を震わす重低音から、地下線路全体を揺るがす轟音へ……  やがて、緩くカーブした線路の向こうから、二つの光輪が姿を現した。  闇の中を、巨大な魔獣の光る目が貫く。
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