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「暑い……」
首にかけたタオルで額を拭うと、存外、汗がその表面を濡らしていた。
軍手をはめた手には、工事用の鉄臭い、剥げた白のシャベル。
この、早々に日陰へと逃げ出したくなる真夏日の翼下、俺はこれを使って無心に地面を掘り続ける。
こんなものを扱う作業なのだから、当然、土汚れは付き物。足元を見てみると、今日下ろしたばかりの靴に土が乗っていた。十二分に注意を払ってきたにも関わらず、この白地の靴には随分と土色が目立つ。
誤解を解いておくと、その掘削作業を行う場所が大学の敷地内だからといって、薬草を培う花壇や、野菜を育てる畑を作ろうしている訳ではない。
じゃあ何をしているのかって?
ただ穴を掘っている……としか言い様がない。今の状況を、実に単純明快に表していると思う。
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