DUF

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「何があった?」 「……あのね、お父さんと一緒に、あれと似たような穴が他にもないか探索してたの。……そ、それで……お父さんがふらっとしたと思ったら、そのまま倒れて……」  あたふたしている彼女に、しっかりするよう呼び掛ける。周囲を見渡すが、人の気配は無く、耳障りな蟲の合唱だけが響いていた。 「……ひとまず日陰へっ!」  このままではマズイと、ぐったりする教授を、二人で学舎の中へ運び込んだ。  ちょうど出会(でくわ)した通りすがりの人に救急車を頼み、少しずつ水分補給をさせながら、電話口からの指示通りの応急処置を行う。 「遥、教授のリュックの中に、冷やせそうな物は入ってないか?」 「あ、えっ……い、今調べるっ!」  瞬間冷却剤を見事取り出すも、彼女は慌てふためいていて、その手は、小刻みに震えていた。 「とりあえず落ち着いた方がいい」 「う、うんっ……」  俺はそれをタオルで巻いて、教授の首元にあてがった。 「……これも使える?」  遥の手には、「クエン酸」とラベルが貼られたビン。  これではまるで、こうなる事が予想出来ていたかのようなラインナップだ。 だが、おかげで早急な処置ができた事に変わりはない。 改めて、このリュックのありがたさを実感した瞬間でもあった。
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