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しばらくすると、救急車が敷地内に到着。
隊員に今までの経緯を説明すると、思いの外、応急処置を絶賛された。後は任せなさい、と彼らは担架に患者を乗せる。
その担架が俺の横を通り過ぎる間際、教授の手が、俺のシャツの袖を掴んだ。
「大智君……」
「あまり喋らない方が良いですよ」
弱々しく絡まる五本指。どうしても、離そうとはしてくれない。
「私は、今回の……何かの凄まじい気に当てられたらしい……」
「おじさん、それは熱中――」
「周囲を、隈(くま)無く探したが、これといって変化は見られなかった……。唯一の手がかりは、大智君の掘っている穴だけだ……。私に構わず、あそこを掘り続けてくれ……」
「何を言ってるんですか……。おじさんを放ったらかしにできる訳無いでしょう……」
「……頼んだぞ」
そんな言葉を残して、教授は救急車に収容された。
付き添いとして、遥が同行を志願する。親子を乗せた車は、隣接する大学病院へと向かった。
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