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「あれ……? 私……そっか、村から逃げて――」
「お目覚めですか、聖女」
カイさんの声にメイスさんは花の咲いたような笑顔を浮かべて立ち上がり、こちらに向かって歩いてくる。
「無事だったんだ、皆。よかった」
そう言って目を細めて嬉しそうに笑うメイスさんを見ていると、僕までなんだか楽しい気分になる。黒騎士さんは無言で彼女を見つめていたが、意を決したように前に出た。
「聖女。俺との誓約を解いてくれ」
「そっか、そだよね……」
メイスさんもそう考えていたのか、少しだけ残念そうに俯いた。カイさんはメイスさんのその肩を優しく叩く。
「彼が望んでいるのです、仕方ありませんよ」
カイさんがそう言った時だった。女性、いや――子供の悲鳴が草原に木霊する。僕達は顔を合わせることもなく殆ど同時に声のした方へと走り出した。
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