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「ぐ……っあ……!!」
それは、永遠に続くかと思われた焼けるような痛み。奴らは再生能力のあるこの角だけは傷つけない。この力が疎ましく、奴らが憎い。
「おいおい、なんだよ、もう終わりか」
「おい、やめろよ……ゼアリータ様の大事な奴隷だぞ、天使の水晶なんて使って死んだらどうするんだ!」
天使の水晶。人間が作り出した、天使の聖なる力に似た力を込めた水晶玉。
「死なねぇよ、この角さえあればな」
奴らの一人――水晶を持った男が俺の頭をもたげる。卑しい笑みをにやにやと浮かべる人間。
「なあ、そうだよなぁ、半魔?」
その言葉を聴き、俺の中で何かが大きく脈打つ。奴が持つ水晶が輝きを増し、角に熱が宿り――体が楽になり、勝手に腕が動いた。
魔力の逆流だろうか。水晶が砕け散ったのと、自分の腕が奴の頭を砕いたのが同時だった。俺の言葉にならない叫びに呼応していくつもの炎が作り出され牢が燃え盛る。もう一人いた人間はすでに焼け死んでいた。
逃げなければいけない。逃げなければ。ここから――。
「ほう、半魔か」
走りだそうとした時に聞こえた耳障りな声。耳障りな単語。俺は声がする方に手を向け――。
「何、私はお前の味方さ――人間が憎いのだろう? 人類の希望を壊したくはないか?」
赤い髪、まるで血のように濁った瞳――。炎に照らされたそれを、俺はただ見つめていた。
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