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「……ねぇ、最近どうなの?」
他の友達と別れて向ちゃんと二人になった時、いきなりそう切り出された。
私は国語は得意だけど、流石に脈絡の無い話は読み取れない。
「どうって……何が?」
「中に決まってるでしょ?アンタさっき喋ってたじゃない」
ああ、そうか……向ちゃんも塞ぎ込みっぱなしの中君のコトが心配なんだね。
でもなぁ、中君は家でもずっとあんな調子なんだけどなぁ。
「喋ったって言っても、こっちの質問に中君が答えただけだよ。ずっとあの感じ」
「そう……」
向ちゃんは少し寂しそうな顔をして、ちょっとだけ俯いた。
そこからはずっとお互い黙ったままで、家の前に着いてしまった。
『じゃあね』と言って家に入ろうとした私の背後から、向ちゃんが声を掛けた。
「……上、待って」
その声に足を止めて、後ろの方へ振り返る。
向ちゃんは険しい顔をしてこっちを見ていた。
きっと今から、何か真剣な話をするつもりなのだろう。
思わずこっちまで顔を引き締めていたけど、向ちゃんは中々口を開かない。
その状態が30秒くらい続いて――本当はもっと短いだろうけど、私にはそれ位に感じた――やっとこさという感じで向ちゃんは口を開いた。
「アンタ、中の事……好き?」
「……え?」
向ちゃんの質問の意味がよく分からなかった。
中君の事はもちろん大好き……。
姉弟だから、恋愛感情の好きって言うのとは全く違うけど。
でもどうしてそれを今聞くのだろう、それも深刻な顔して。
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