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「私は中君が好き。もちろん、弟としてね」
私がそう言うと、向ちゃんは顔を真っ赤にした。
「あ、当たり前よッ!!それ以外だったら変態じゃない、全く。大体アンタ達は……」
それからも向ちゃんは何やらブツブツと呟き続けている。
さっきから話が見えて来ないんだけどな。
「でもまぁ、アンタが普通の感性を持ってて安心したわ。中を異性として見てたらどうしようかと……」
そう言って、顔をポリポリと掻く向ちゃん。
その様子に思う所があった私は、単刀直入に聞いてみた。
「向ちゃんは中君の事が好きなんでしょ?もちろん異性として」
「ふッ――!?」
瞬時にして耳まで真っ赤に染め、唇をわなわなさせる向ちゃん。
ホントに分かりやすいなぁ、この子は。
とか考えながら心の中でほのぼのしていたら、頭をはたかれてしまった。
「いたいッ!?」
「い、今は私の事はカンケー無いのよ!!」
「あはは、ごめんごめん。で、結局何の話なの?」
私が話を元に戻すと、向ちゃんは一つ咳ばらいをして、それからまた真面目な顔になった。
「そうね……アンタは今、中を異性として好きとは思ってないって言ったわよね」
「うん。言った」
「でもね、他の周囲の女子達は違うの」
「向ちゃんとか?」
「ぅぅうるさい!!その話は一旦置いといて!!」
向ちゃんは再び顔を上気させたけど、今度は少し怒っているようだ。
真面目に話を聞いてあげよう。
「落ち着いて落ち着いて。それって、中君を好きな女子が他にもいるって事?」
「大勢いるのよ……それこそ、他の男子が女子から見向きもされなくなるほどに」
「え……」
中君がそこまでモテるとは、私は全然知らなかった。
そりゃあ中君は顔立ちは良いし、小学生の頃は何人かの女子が中君に寄って来た事もある。
でもそれはたかが数人、片手で数えられる位だ。
それがどうやら、変わって来ているらしい。
「アイツ、中学に入ってからずっと大人しいんでしょ?」
「大人しいどころか、他人とはマトモに喋ってもいないけど……」
そんな状況で、どうやって急にモテると言うのか。
むしろ陰気な印象を持たれるんじゃあ……。
私がそれを指摘すると、向ちゃんはやれやれと首を振った。
その事は彼女も重々分かっているらしい。
「そりゃ、普通の男がそんな事をしてたら陰気臭いだけよ。でもそれが中だとしたら……?」
「クール……に、見えるかな?」
「そう、その通りよ」
なんてこったい。
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