4人が本棚に入れています
本棚に追加
*****
泣きすぎたな、泣きすぎた。私は泣きすぎた。なにが悲しかったのかさえもうよく分からないくらいに泣きすぎた。泣きすぎた。笑える。ははは。ああ、うん、涙は涸れたよ。私は枯れたよ。私は彼だよ。彼は彼かな。私が彼だな。枯れた彼は私だよ。ああそういえば、私の涙は彼のだったんだっけかな。ふうむ、そうなると泣けてくる。泣こうじゃないの。泣こう。なにが悲しかったのかさえもうよく分からないけれど。『彼』って誰だっけ。私は私。『彼』って誰だっけ。えんえん、えんえん。分からないよう、分からないよう。悲しくはないけれど。苦しくはないけれど。例えるなら糸の切れた人形。踊りかたを忘れてしまった。ほら泣こう。泣こうじゃないの。私の足は折れて曲がった。私の腕は関節がおかしい。私の目はふしあなだ。ほらほら泣こう。泣こうじゃないの。頭がおかしいと、頭以外は最高に正常だ。折れた足でタップを踏もう。奇怪な腕で手を叩こう。からっぽの穴には彼を閉じ込めておけばいいんだ。幸せだ幸せだ、ああ、私は幸せだ。幸せすぎて泣けてきたよ。
最初のコメントを投稿しよう!