表と裏

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「これがホントの私。あなたが好きになったのはニセモノの私よ」 「意味が分からない」 「だから、猫かぶってるの私」 「え、じゃあ優しいのも、天然なのも………」 「ホントの私は優しくなんかないし、天然じゃないわ」 毛先を指でピンとはじいて 俺の目を見た 「あなたはまんまと私にだまされたのよ」 「………………っ」 「分かったならさっさと行きなよ。西島くんの告白もなかったことにするから」 それだけ言うと、俺に背を向けて歩きだす伊藤さん 「待てよ」 軽く追いかけて その細い手首を掴む 「…なに?」 不機嫌そうに俺を睨む 「なかったことになんてしなくていい。俺と付き合って」
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