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「…ええっとぉ、そして、魔族の娘と結婚した勇者はぁ、子どもを何人かもうけた後ぉ、忽然と姿を消しました…と。
…残された魔族たちの考えではぁ、やはり人間の娘の方がいい、と逃げ出したんだろうという説が有名で…す…。…だって、勇者も人間だもの。」
カキカキ、と。
「えと…そんなことがあってから、魔族の中では憎むものが人間全体から勇者一人に変わった者も多いそうです…と。
―――ほい、できた。」
書き込んでいたテキストを机の上に投げ出して、窓の外に広がる青空を見つめた。
「あー…もう20年も経つのかー」
小鳥が気持ち良さそうに空を飛びまわり、可愛らしいさえずり声を披露していた。
あー、超平和。超眠たい。
コンコンっ
「…はーい?誰―?」
チッ、こんな時に誰だよ。
「アゼルです。―――魔王様がお呼びですよ。」
どうやらとても大切な用だとか。
にっこりと年齢不詳の銀髪美丈夫が俺に告げる悪魔の知らせ。
うわー、行きたくねー。
「…分かった。今、行く。」
開けていた窓を閉めて、部屋から出る。…鍵もしっかりかけて、と。
…さて、行きますか。いざ、魔王様の下へ。
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