4443人が本棚に入れています
本棚に追加
『もしもーし、優ちゃん?』
京さんの耳元にある私の携帯から、秀さんの明るい声が聞こえてきた。
やっぱり秀さん声大きい!
「てめぇ、なんで優に電話してんだ」
私の携帯で話し始めた京さんは、低くドスの効いた声で秀さんに尋ねる。
『京!! やっぱり優ちゃんと一緒におったんか!』
「・・・」
『お前に電話しても出えへんから、もしかしたら一緒に居るんやないかと思って優ちゃんに電話したんや!』
「・・・」
『お前、勝手に行動すんなや!せめて俺に一言言ってけ!』
携帯の受話器がスピーカーになってるんじゃないかと思うくらい、隣にいる私にまで鮮明に秀さんの声が聞こえる。
京さんを見れば携帯を耳から離し表情をしかめていた。
さっきの京さんの電話、秀さんだったのかな?
『おい、聞いとんのか!?』
京さんから何の返答が無いせいか、秀さんの声のトーンが少し下がる。
それでも十分私にまで聞こえてきた。
「うるせぇ。聞こえてる」
京さんは不機嫌そうに携帯を耳から離したまま答えた。
『ぁあ?うるせぇってなんやねん!勝手に居なくなって』
「なんでお前に言わなきゃならねぇんだ」
『はぁ!?アホか! お前は自分の立場わかってないんか!!』
「うるせぇ」
・・・また始まった。
車内に秀さんの怒鳴り声が響く。
携帯で話しているはずなのに、車内に一緒にいるんじゃないかってくらいに声が聞こえる。
どうしよう・・・。
昨日は葵兄や渉のおかげで言い合いは収まっていたが、今日は誰も二人を止めてくれる人がいない。
『んだと、コラァ!』
「あ゛?」
私の悩みをお構いなしに二人はヒートアップしていく。
「ひぃぃぃ!」
大きい声を出し始めた京さんに視線をやれば、今まで見たことのない表情をしていた。
鬼だ!!鬼がいる!!
.
最初のコメントを投稿しよう!