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京さんの綺麗な横顔が今は鬼の形相になっており、口からはドスの効いた低い声が出てきている。
京さんヤ、ヤクザみたい・・・。
あっ!・・・ヤクザだった。
ってかなんでそんな怒ってるの!?
「き、京さん?」
止まる事のない二人の言い合いをどうにかしなきゃと思い、勇気を振り絞って鬼・・・じゃなくて、京さんに声をかけた。
「ひぃ!」
京さんの鋭い視線が私を捉える。
「わりぃ、もう少し待ってろ」
「は、はいっ!」
京さんの表情は鬼のままだったが、私に話しかける優しい声に少し安心する。
「秀、てめぇ勝手に優に電話してんじゃねぇよ」
電話口で話す京さんの声は、低い声に戻っていた。
『は?別にいいだろうが!』
「良くねぇよ。優は俺の女だ。勝手な真似してんじゃねぇぞ」
『・・・』
京さんの口から発せられた“俺の女”という言葉に心臓が脈打つ。
気付けば、煩く聞こえていた秀さんの声が聞こえなくなっていた。
「優の事送ったら一度事務所戻る。少し黙って待ってろ!」
京さんはそう言うと一方的に電話を切った。
“俺の女”
京さんが電話を終えた事に気付かず、私の頭で繰り返される言葉に自然と笑が溢れる。
「優」
「んー?」
京さんの呼び掛けに顔を上げれば京さんが不思議そうに私の顔を覗き込んでいた。
「わっ!」
思ってた以上に京さんの顔が目の前にあったため驚いた。
「さっきから一人で百面相して、なにやってんだ?」
「え?百面相?」
そんなことした覚えない。
「引き攣った顔してたかと思ったら、急にニヤけだしたろ」
見られてたの!?
「優はわかりやすい」
「そ、そんなことないもん」
どちらかと言えば『何考えてるか分からない』って言われる方が多いのだが。
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