エピソード1

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◆◆◆◆◆◆ 「優、起きろ」 遠い意識の中、私の名前を呼ぶ声が聞こえる。 知らないうちに寝てしまっていたようだ。 「う・・・ん・・・」 閉じてしまっていた瞼をゆっくり開いていく。 「・・・ん」 辺りが暗くなっているせいか、ナビのモニターの明かりが少し眩しく感じる。 「着いたぞ」 「・・・え?」 窓の外を見れば、見慣れたマンションの玄関。 「・・・家だ」 途中で寝てしまったため、マンションの場所の説明はしていない。 本当に知ってたんだ・・・。 寝ぼけながらも京さんの言う情報というやらに少し驚く。 「わりぃな。もう少し寝かしてやりてぇんだが・・・」 「ん?」 視線を窓から声の聞こえる方に向ける。 そこには闇に溶け込み始めた京さんがいた。 「拓真さん帰ってるみてぇだ」 「んー?拓真ー?」 マンションの駐車場を覗けば、目立つ白いベンツ。 「・・・本当だ」 「さっきから携帯も鳴ってる。きっと拓真さんからだろ」 「え!?」 全然気づかなかった・・・。 自分でも驚くほど熟睡してしまっていたようだ。 「あ・・・」 バックから携帯を取り出そうとしていると、着信音が鳴り出した。 光る携帯を取り出し画面を確認する。 そこには拓真の名前と番号が表示されていた。 「出ていいぞ」 「うん・・・」 携帯の画面の通話をタッチし、ゆっくりと耳元へ運んだ。
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