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今私達が乗っている京さんの車は、フルスモークの黒光りする車。
どう見ても一般人が乗っているような車には見えない。
濃いスモークで乗車してる人が見えないにしても、こんな車の窓をノックする勇気ある人がいる事に驚く。
音の聞こえたのは私の座る助手席の窓。
ゆっくりと振り向き、ノックした人物を確認しようとしたが外も暗くなっているせいかシルエットしか見えない。
だ、誰!?
「優、大丈夫だ」
京さんは左手で私の手を握ると、もう片方の手で助手席の窓のボタンを押した。
ゆっくりと窓ガラスが下がっていき、ノックしたであろう人物の姿が現れる。
「・・・あっ!!」
「よぉ」
車内を覗き込むように屈む人物は、私もよく知る人だった。
確かにこの人なら、躊躇いもなくノックするだろう。
「お久しぶりです。・・・拓真さん」
「おう」
拓真は、京さんに鋭い眼光を向けていた。
「お前か。俺の可愛い優を連れ回してたのは」
「ちょっと!私連れ回されてなんか・・・」
「遅くなってすみませんでした」
私の言葉を遮り京さんは拓真に謝った。
「京さん・・・」
京さんに顔を向けると優しく微笑む京さんと目が合う。
「大丈夫だ。少し待ってろ」
そう言うと京さんは車のドアを開け、助手席の窓ガラスを上げると外に出て行った。
外の様子を伺おうとしたが、二人の姿が見えないどころか声も聞こえない。
大丈夫かな・・・。
一人残された車内にはマフラーの低い音だけが響いていた。
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