エピソード1

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京さんが外に出て20分ぐらい経っただろうか。 その間、拓真の「あ?」とか「は?」とか言う声は聞こえてきたが、二人が何を話しているのかは分からなかった。 『ガチャ』 急に開かれたドアにビクッとする。 「降りろ」 ドアの開いた方を見れば拓真が立っていた。 バックを抱えゆっくりと足を車から出す。 外はすっかり暗くなっており、ポツリポツリと星が光っていた。 「京、頼んだぞ」 「はい」 車から降りドアを締める瞬間二人の会話が少し聞こえてきた。 頼む?何を? 「行くぞ」 「あ・・・」 首を傾げる私の背中を拓真に押され、マンションの入口に向けて足を踏み出した。 「優、また連絡する」 後ろから京さんの声が聞こえ足を止めて振り返った。 「京さん、ありがとう」 「あぁ」 「行くぞ。腹減った」 拓真に腕を引かれ再び京さんに背を向ける。 背中越しに京さんの視線を感じた。 .
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