エピソード1

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車は市街地へ向かってるようだ。 歩道を歩く若者やスーツを着た人たち。 ネオンの灯りも少しずつ増えてきた。 拓真は、駅前の大通りの近くまで来るとパーキングに車を停車させた。 「降りろ」 拓真に言われるがまま車から降りる。 「少し歩くぞ」 「うん」 どこ行くんだろう・・・。 拓真は大通りを少し歩くと、細い裏路地に入って行った。 街灯は少なく薄暗い。 少し歩くと一軒の建物の前で足を止めた。 「ここだ」 「え?ここ?」 目の前にはお洒落な感じの扉。 その扉の上には『BLUEMOON』と書かれた看板が付いていた。 私が見るからに、『BLUEMOON』の前に『BAR』という表示が見える。 「ここBARだよ?お腹すいたんじゃないの?」 「ここ、俺の知り合いの店なんだ。入るぞ」 拓真は目の前の扉に手をかけると、ゆっくりと開いていく。 初めての場所に緊張し、固まる私の身体を強く引き寄せられ、店の中へと足を踏み入れた。 「なにこれ・・・」 目の前の状況に驚く。 店の入口の扉を開けて入った場所は、青いライトに照らされた通路らしき所。 その奥にまた扉があった。 「この店、あいつの知り合いしか入れねぇんだ」 “あいつ”とは、この店のマスターのことだろう。 さっきの緊張はなんだったの!? 扉の前での緊張を返して欲しい。
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