エピソード1

123/146

4429人が本棚に入れています
本棚に追加
/224ページ
「知り合いしか入れないって、どういう事?」 私は拓真に尋ねた。 入口の扉には特に何も無く、拓真も普通に扉を引いて開けていた気がする。 これじゃ誰でも入れるんじゃ・・・。 「これだ」 拓真はポケットから何かを取り出すと、指に挟み私に見せてきた。 「・・・カード?」 青いライトでよく見えないが、指に挟まれた物はカードのような物だった。 「これをここに・・・」 拓真は扉の前まで行くと、ノブの横にある機械のような物に差し込んだ。 『ピー、___ガチャ』 途端に聞こえる認証音と鍵の開く音。 「カードキー?」 「あぁ、入るぞ」 拓真は再び扉に手をかけると、ゆっくりと開いた。 拓真に連れられるがまま扉を潜る。 一つ目の扉の時のような緊張は無くなっていた。 「・・・凄い」 目の前に広がる光景に、先程とは違う驚きに息を呑む。 「綺麗・・・」 私の視界に映る蒼い海。 大きな水槽に色とりどりの魚が泳いでいる。 底に敷かれた白い砂。 青いライトに照らされた水面がユラユラと揺れている。 目の前に広がる幻想的な光景と音楽に言葉を失い、瞬きするのも忘れていた。 「いらっしゃい」 水槽に夢中になっていると、奥の方から若い男の人声が聞こえてきた。 声のする方に振り向けば、優しい笑顔を浮かべる綺麗な黒髪の男の人が立っていた。 「おう、蒼!! 久しぶりだな!」 「あぁ、久しぶり」 どうやらこの人が拓真の知り合いで、この店のマスターのようだ。
/224ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4429人が本棚に入れています
本棚に追加