エピソード1

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「拓真、その子は?」 蒼さんと視線が交わる。 「あぁ」 再び拓真に肩を抱かれ、蒼さんのいるカウンターまで足を進めた。 「優だ。こいつは蒼、昔からの知り合いだ」 拓真は交互に紹介を始めた。 「はじめまして、優ちゃん」 蒼さんは優しい笑顔を向けながら挨拶してくれた。 「は、はじめまして!」 「可愛い子だね。拓真にも彼女出来たんだ」 「ち、違いまっ」 「そー見えるか!?」 否定をする私の声に嬉しそうな拓真の声が重なる。 「た、拓真!」 「え?違うの?」 蒼さんは驚いていた。 「拓真が女の子連れてくるのなんて初めてだから、てっきり彼女かと・・・」 「違いますっ!!私は拓真の姪です!!」 私は蒼さんにはっきりと伝えた。 『姪』という部分を強調して。 「お前そんな拒否んなよ」 「え?拓真の姪って・・・」 何か考え事をしている表情の蒼さん。 「あぁ、兄貴の子だ」 「そうか。葉月さんの・・・」 え?蒼さんもパパの事知ってるの? 「こいつは昔から兄貴のこと慕ってたんだ」 「え?」 「葉月さんは俺の恩人なんだ。あの人と知り合わなかったら今の俺はいなかったと思う」 「今はこんな落ち着いてっけど、昔の蒼はどうしようもねぇ問題児だったからな」 「え?蒼さんが!?」 目の前にいる蒼さんは、落ち着いた大人の男性で、昔やんちゃしてたように見えない。 「いや、拓真には言われたくない」 二人は昔を思い出したかのように楽しそうに笑っていた。
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