エピソード1

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「さぁ、座って」 ひと通り笑い終えた蒼さんが、カウンターのイスを引いてくれた。 「ありがとうございます」 少し高めのイスに腰を下ろす。 拓真は私の隣に座った。 カウンターを覗けば、お酒のボトルとグラスが沢山並んでいる。 やっぱココってお酒飲む所じゃ・・・。 「優、何食いたい?言えば何でも出てくるぞ」 いや、なんでもって・・・無理でしょ!! 「俺カツ丼とピザと、肉食いてぇ」 「は?」 何その組み合わせ! ファミレスじゃないんだから、出てくるわけないじゃん!! 「了解!」 「え?ちょっと!」 「優ちゃんは?」 いや、蒼さん・・・。 了解しちゃ駄目でしょ! 「あ、あのー・・・メニューは?」 「そんなのないよ」 笑顔を浮かべながら答える蒼さん。 「食べたい物言ってくれれば、俺が作るからさ」 「蒼さんが作るんですか!?」 「そうだよ。・・・他に誰かいる?」 お店の中をぐるりと見渡す。 蒼さん以外店員さんの姿は見えず、それどころか私達以外のお客さんもいないようだ。 「大丈夫だ。こいつの料理の腕は本物だ」 「そうだよ! 優ちゃん何が好き?」 蒼さんが、キラキラと輝く瞳で私を見ている。 「・・・海老が好きです」 「了解!」 「あっ!あまりお腹空いてないので少しで大丈夫です」 「そうなの? わかった、少し待っててね」 そう言うと、蒼さんはカウンターの奥へと入って行った。
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