エピソード1

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「飯出来るまでなんか飲むか!」 拓真はイスから降りると、カウンターの中へと入って行った。 「ちょっ! 拓真!?」 平然と入って行く拓真に驚き、イスから立ち上がりカウンターを覗きみる。 「んー?」 拓真はカウンター下にある冷蔵庫を開け、物色していた。 「勝手に入っちゃまずいよ!」 「ん?大丈夫だ、俺はいつもセルフサービスだから」 「は?」 「いいから、優は何飲む?」 「・・・いい」 「遠慮すんなよ」 「いや、拓真の店じゃないでしょ! 蒼さんにお願いするからいいよ」 「そーかよ、ほら」 目の前に出される白いマグカップ。 覗き込むと白い容器に注がれた黒い液体が入っていた。 香りからしてコーヒーのようだ。 「まだ時間かかるだろうから、それ飲んで待ってろ」 「あ、ありがとう」 カウンターから出てきた拓真は、グラスと灰皿を手に持ち私の隣のイスへと腰を下ろした。 「誰もいないね」 「ん?」 「・・・お客さん」 「あぁ」 拓真はポケットから煙草を取り出すと、口に咥え火を付けた。 「貸し切ったからな」 「え!? どうして?」 「知らねぇ酔っ払いに囲まれて食事すんの嫌だろ?」 「うん・・・」 「まぁ、蒼の知り合いしか来ねぇから悪い奴はいねぇと思うが、煩せぇからな。ちゃんと話できねぇし」 「話?」 私は目の前に出されたカップに手を伸ばし、口をつけた。 「あぁ。お前、京と付き合う事になったらしいな」 「んっ!?」 あやうくコーヒーを吹き出してしまうとこどった。
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