エピソード1

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「なっ!?なんで知ってんの!?」 「京から聞いた」 「き、京さんから・・・」 「落ち着け。別に怒ったりしねぇよ」 拓真はグラスを手に取ると、中に入った茶色の液体を口に運んだ。 「俺は裏で隠れてコソコソされんのが嫌いだ」 「う、うん」 「優も京の事好きなんだろ?」 「うん」 私は小さく、けれどしっかりと頷いた。 「そうか」 拓真は煙を吹き出すと、短くなった煙草を灰皿で揉み消した。 「なら止めはしねぇが、俺はお前が心配だ」 拓真の茶色い、力強い瞳が私を見つめていた。 「昨日一緒に住むって約束したばかりで悪いんだが・・・」 拓真が申し訳なさそうに話し出す。 「またしばらく帰れそうにねぇんだ」 「うん・・・知ってる」 「は?なんで知ってんだ?」 「また出張になるって、今日渉から聞いたの」 「渉に?」 「うん。渉もおじさんから聞いたみたいだったけど」 「ったく!あのオヤジ人使い荒いんだよ!!」 不満を漏らす拓真は、再び煙草を取り出し火を付け吸い始めた。 「まぁいい。そこでだ」 落ち着きを取り戻した拓真が私に視線を戻す。 「お前、明日から京の所に行ってろ」 「はぁ!?」 い、今なんて言った!? 拓真の言葉に、思考が一瞬停止する。
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