エピソード1

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「昨日言ったよな?同じヤクザでも渉や葵とは違うと」 「うん・・・」 「皆が京を尊敬して慕ってる奴らばかりじゃねぇ。あいつを憎み、妬んだ奴らもいる。敵対してる組だって山ほどある」 「・・・」 「今の京にとって、弱点はお前だ」 「・・・私?」 「そうだ。奴らはそこを叩いてくるはずだ」 私が京さんの・・・。 俯く私の耳にライターに火が灯る音が聞こえた。 京さんの・・・弱点・・・。 膝の上に置いた手をギュッと握り締めた。 「・・・私、京さんの傍に居ない方がいいのかな?」 拓真に向かって思いを口に出した瞬間に、涙がこみ上げてきた。 「はぁ?」 拓真の声が店内に響く。 「だ、だって!!」 「優、落ち着け」 私の強く握り締めた拳の上に、拓真の手が置かれた。 「今のは可能性の話だ」 「で、でも京さんが!」 「京の心配はいらねぇ。アイツも馬鹿じゃねぇからな」 「でもっ!」 「いまさら何言っても京はお前を離す気はねぇぞ」 「え・・・」 「優だって京と一緒にいてぇんだろ?」 拓真の手が私の頬に伸びる。 私の瞳から零れ出した涙をそっと拭ってくれた。
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