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「・・・俺、昼間噂を耳にした時信用してなかったんだ」
静かに私たちの会話を聞いていた蒼さんが口を開いた。
蒼さんは私に微笑みかけながらゆっくりと話していく。
「俺も昔から京の事を知ってるけど、女と肩くんで歩いたうえに車に乗せるなんて、見た事も聞いた事もなかったからね。だから見間違いか、暇な奴らが流した嘘だろうと思ってた。・・・でも違った」
「え?」
「正直驚いたけど、その女の子がここにいる」
蒼さんの黒髪から覗く優しい瞳が私を捉える。
「今まで特定の女がいたっていう話は、俺も拓真の耳にも入っていない」
蒼さんの口から出た“特定の女”と言う言葉に身体が反応する。
“特定の女”って、彼女って事?
「でも優ちゃんは違うんだろ?」
確かに京さんは、秀さんに私の事を『俺の女』って言ってくれた。
こんな私のことを『好きだ』、『愛してる』と。
「俺、優ちゃんにお願いがあるんだ」
「お願い・・・ですか?」
「うん。どうか京を信じて、傍にいてやって欲しいんだ」
「え?」
「優ちゃんも、京がヤクザの若頭って知ってるよね?」
「・・・はい」
「でも、その前に京も男なんだよ」
蒼さんは優しく私に語りかける。
「確かに京の傍にいれば取り巻く環境は変わってしまう。普通なら考えられない事も起こるかもしれない。それでも優ちゃんが京の傍にいたいと思っているのであれば、京を一人の男として愛してやってほしいんだ」
蒼さんの言葉が胸に響いた。
京さんを一人の男として・・・。
瞼を閉じれば、京さんが浮かぶ。
前髪から覗く力強い漆黒の瞳。
『優』
私を呼ぶ優しい声が聞こえた気がした。
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