エピソード1

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「じゃあ、これあげる」 蒼さんは私に、カードらしきものを差し出してきた。 「この店の鍵だよ」 「えっ?」 首を傾げる私に、蒼さんは言葉を足した。 どうやらカードの正体は、拓真も持っていたカードキーらしい。 たしか知り合いしか入れないって・・・。 「よかったらまた来てよ」 「で、でも」 「優、貰っとけ」 鍵を受け取るのを戸惑っていると、後ろから拓真の声が聞こえ、そちらに振り返った。 「蒼がいいって言ってんだ。貰っとけ」 「う、うん」 私は再び蒼さんの方へ向き、差し出されるカードキーをそっと受け取った。 私なんかが貰っちゃっていいのかな? 「ついでに連絡先も聞いとけ」 「え?なんで?」 「一応この店も他の客入るからな。行く時先に連絡しとけば、蒼がなんとかしといてくれるだろ」 「なんとかって?」 「今みてぇに、人入れねぇようにしてくれるだろ」 「でもそれ、蒼さん迷惑なんじゃ・・・」 「優ちゃん、気にしなくて大丈夫だよ。この店は俺の趣味でやってるだけだからさ」 「 趣味でやってるだけ?」 「蒼の仕事は、ここのマスターだけじゃねぇからな」 私の問いに、拓真が答えてくれた。
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