エピソード1

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「そんな怒んなよ」 「そ、そうだよ!」 こちらを睨む拓真を蒼さんに続いて嗜める。 しかし拓真の眉間のシワは取れる様子がない。 「冗談だ、冗談!」 「っ!」 蒼さんの発言に驚き、後ろに振り向いた。 冗談だったの? 凄くいい案だと思ったのに! 振り返った先にいる蒼さんは微笑んでいた。 けれどその微笑みは、今まで見た優しいものとは違う意地悪さを含んだもの。 ・・・なんか嫌な予感。 「優・・・なんだよ」 「あ・・・」 気付いた時には既に遅く、後ろからは拓真の不機嫌そうな声が聞こえてきた。 「なっ!!」 引き攣った私の表情とは反対に、蒼さんは満面の笑を浮かべていた。 「優、何か言いてぇことあるなら言えよ」 「ひぃ!」 ちょっ! な、なんで私だけ!? 絶対蒼さんだって冗談で言ってないよ! 焦る私を見て、蒼さんは肩を震わせている。 笑ってるし!! 弧を描いていた蒼さんの口がゆっくりと動き出した。 「ん?」 蒼さんは声を出す様子は無く、口唇の動きに目を凝らし読み取る 『ご、め、ん、ね?』 ご、ごめんねじゃないし!! 私は精一杯、蒼さんを睨めつけた。 元はと言えば、蒼さんのナイスアイディアのせいじゃん! 笑ってないで助けてよ!!
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