エピソード1

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私は先程までの経緯を、京さんに簡単に話した。 『・・・そういう事か』 京さんの声のトーンが戻る。 『大丈夫だ。二人ともからかってるだけだ』 「え?」 『・・・今から行ってやろうか?』 「えっ!?」 『嘘だ。行ってやりてぇが明日の仕事済ませとかねぇとならねぇからな』 そうだ!明日! 『明日渉んとこ行くんだろ?昼前には迎えに行く』 「はい」 そんなことより・・・。 「あ、あの・・・」 『ん?』 私は藤堂家訪問より気になっていた事を、京さんに尋ねる事にした。 「拓真に明日から京さんの所に行けって言われたんですけど・・・」 『あぁ』 「あの、・・・迷惑じゃないですか?」 自分から尋ねたものの、京さんの返事に不安になる。 もし迷惑だと言われたら・・・。 少しずつ鼓動が早くなるのを感じた。 『あ?』 「っ・・・」 耳に聞こえる不機嫌そうな低い声。 やっぱり私なんか・・・。 『何が迷惑なんだ?』 瞳に涙が込み上げてきた所で、京さんの呆れたような返事が帰ってきた。 『俺は今すぐにでも、迎えに行きてぇ』 甘く優しい京さんの声に、鼓動が勢いを増して激しくなる。 『俺の傍にいろって言ったろ?』 「つっ・・・」 安堵からなのか、私の瞳から一粒の涙が零れ落ちた。
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