エピソード1

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慌てて振り向くと、真後ろに片耳を塞いだ拓真と蒼さんが立っていた。 「た、拓真!?蒼さん!?」 「なんだよ」 眉間に皺を寄せる拓真が呟く。 こっちのセリフだし! 「どうしたの?」 「そろそろ帰るぞ」 「あ、うん」 「優ちゃん、後で俺にメッセージ送っといてね」 「はい!今日はご馳走様でした」 「いえいえ、また来てね」 「はいっ!」 私は笑顔で手を振る蒼さんに軽く頭を下げ、お店を後にした。 青いライトに照らされる廊下を拓真の後ろに続き歩く。 ・・・ん?何か忘れてる? 「あっ!」 忘れ物が何かを思い出した私は、その場で足を止めた。 「なんだよ」 そんな私に気付いたのか、拓真も足を止め私の方へ振り返る。 「お店にバック置いてきちゃった!」 「・・・」 何故か無言の拓真。 「取ってくるから待ってて!」 「おい!」 お店へ戻ろうと、体を反転させた所で拓真に止められる。 「なに?」 頭だけ振り返ると、拓真は呆れた表情を浮かべていた。 「・・・これ、なんだよ」 拓真の腕から何かが差し出されている。 なんだよって、・・・ん? 「あっ!」 青いライトに照らされるそれは、見覚えのある物だった。
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