エピソード1

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必要なもの、必要なもの・・・。 「わっ!」 考え事をしながら歩いていると、急に拓真に腕を掴まれた。 「な、なに?」 「お前、どこまで行くんだ?」 「どこって拓真の車まで」 「・・・通り過ぎてる」 「えっ!?」 慌てて後ろを振り向けば、パーキングで異様な存在を放つ白のベンツ。 「あれ?」 「どこか行く所あんのか?」 「別にない・・・」 「声かけても反応ねぇし」 「え!?」 全然気づかなかった!! 「ったく、今後考え事をしながら歩くな」 「・・・気を付けます」 私たちは通り過ぎてしまった車へと、再び足を進めた。 パーキングに止められた車へと戻り、私は助手席、拓真は運転席へと乗り込んだ。 拓真の手によって車のエンジンが掛けられる。 ・・・・・あっ! 「拓真お酒!」 「酒?」 「お酒飲んでるでしょ?」 飲酒運転するつもり? 「は?飲んでねぇよ」 「でも蒼さんのお店で・・・」 「ウーロン茶とコーヒーしか飲んでねぇ」 「そうなの?」 「自分の車、他人に運転させたくねぇし」 拓真はポケットから煙草を取り出すと、火を点け吸い始めた。
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