エピソード2

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「・・・おい、何だこれ」 「ん?」 声のした方へ振り向くと、お風呂場から出てきた拓真が後ろで立ち尽くしていた。 「これ、全部持ってく気か?」 そう言いながら指差された場所には、私がまとめた荷物が置かれている。 「うん!」 「おい・・・『うん!』じゃねぇだろ。京の車じゃ運べねぇぞ!トラックでも用意してもらう気か!?」 目の前に置かれた荷物は、キャリーケース4つと大きめのバックが3つ。 手元には愛用している抱き枕。 普段使っている物を詰めていった結果がこれ。 「だって・・・」 「『だって』じゃねぇ。せめて3つに減らせよ」 「み、3つ?」 「あぁ」 拓真は「とりあえず、コレはいらねぇな」と言いながら、私がかかえる抱き枕を取り上げた。 「ちょっ!」 それ、お気に入りなのに! 「これには何入ってんだ?」 拓真は私を無視し、キャリーケースのロックに手をかける。 「ダメー!!」 「おう!?」 開けようとする拓真の手をギリギリで止めた。 「こ、これはダメ!」 いきなりの私の大声に拓真は驚いた後、不服そうな表情を浮かべている。 けれど、このケースだけは死守しなければならない。 なぜなら下着類をしまってあるから。 「じ、自分でやるから!拓真はあっち行ってて!」 「なんだよ」 「いいから!」 私は拓真の背中を無理やり押し、リビングのソファーに座らせた。
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