エピソード2

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・・・渉に連絡しなきゃ。 バックから携帯を取り出し、着信の履歴を表示させる。 いつもなら、渉の名前が並んでいる所に京さんの名前が並んでいる。 ただそれだけの事なのに、妙に嬉しく感じた。 「おい」 携帯の画面をじっと見つめていると、拓真の声と共に手が伸びてきた。 「なに?」 「あいつ等はとりあえず放っとけ」 そう言うと私の手から携帯を取り上げた。 「ちょっと!放っておいたら明日二人とも来ちゃうよ」 「いいじゃねぇか。おもしれぇ」 拓真は意地悪げな笑みをうかべていた。 「何がおもしろいのよ!」 「ん?色々と」 「いいから、私の携帯返してよ」 拓真に奪い取られた携帯を取り返そうとするがなかなか上手くいかない。 「まぁ、京に任せとけば大丈夫だ。優も早く風呂入ってこいよ」 「あっ、ちょっと!」 拓真は私の携帯をズボンのポケットにしまい、タバコに火をつけ吸い始めた。 流石にポケットにまで手を突っ込めない。 「もう!お風呂出たら返してよね!」 「はいはい」 私はソファーから立ち上がると、微笑みながら手を振る拓真を無視し、お風呂場に向かった。 今日も色々あったな・・・ 長い髪をまとめ上げ湯船に浸かっていると、今日あった事が思い返されてきた。 その中でも私の頭を占めるのは、手の届かない人だと思っていた京さんからの告白。 京さんはこんな私を愛してると言ってくれた。 明日からはその京さんとの生活が始まる。 正直、急な展開に頭が追いつかない。 「やばい・・・」 逆上せそうになった私は湯船からあがり、シャワーを捻った。 少し温めのお湯が降り注いできたが、火照った体には心地よかった。
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