エピソード2

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聞き慣れない音と暖かい温もりに包まれながら私は目を覚ました。 ・・・ん?暖かい? 重い瞼を精一杯開くと、そこにはまたしても拓真の肌が目の前にあった。 「っ!ま、また!?」 「んー・・・」 背中に回された拓真の腕に力が込められ、顔ごと胸板に押し付けられる。 「っ、ちょっと!」 もがいて腕の中から脱出を試みるが上手く抜け出せない。 未だ携帯は鳴ったままだ。 「拓真、起きて!!」 「ん・・・」 よかった、起きた。 安心したのもつかの間、枕元に置かれた携帯を手に取ると軽く舌打ちをし、再びその手は私の背中に回された。 鳴り響く音は消えている。 「え?ちょっと、電話は?」 「いい」 そう言うと拓真は眠りについたようだった。 「私は良くないんですけど!」 再び腕からの脱出を試みる。 すると、一度消えた筈の携帯の着信音が再び鳴り出した。 「うるせぇ」 拓真は明らかに不機嫌そうな声で呟くと、携帯に手を伸ばし今度こそ耳に当てた。 た、助かった・・・。 「ー・・・あ?」 横から聞こえてくる低い声。 眉間にもシワがより、明らかに機嫌が悪そうだ。 拓真は私に布団を掛け直し頭をそっと撫でた後、寝室から出て行ってしまった。 何かあったのかな? 微かに拓真の声は聞こえてくるものの、何の話をしているのかはよく聞こえない。 少し心配に思うも、一人ベッドに残された私は、瞼の重さに逆らえずゆっくりとまた瞳を閉じた。
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