エピソード2

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「・・・ん?」 シャワーを浴び終え、脱衣場に出た瞬間に部屋の異変に気づいた。 リビングから人の話し声が聞こえる。 テレビ・・・? 一瞬テレビかと思ったが、起きてから一度も見ていない。 誰か、いるの? この家に自由に出入りできる人物は、私以外に二人いる。 拓真と渉だ。 拓真は朝出発したし、・・・渉? また渉が勝手に入ったのだろうと思い、扉を開けると同時に大きめな声を出した。 「ちょっと!勝手にっ!?」 リビングのソファーには、渉ともう一人の姿があるのにすぐ気づいた。 その人物がゆっくりとこちらに振り向き、漆黒の瞳と視線が重なった。 「なっ!?」 「よお」 「きょ、京さん!?」 驚く私をよそに、京さんは優しい笑顔を浮かべていた。 「えっ?なんで?」 なんで京さんが私の部屋にいるの!? いきなりの出来事にパニックになる。 すると「俺が入れたんだよ」と言いながら、渉が目の前に現れた。 「あ、渉・・・」 「電話しても出ねえし、なんかあったんかと思って家来たら下で京さんと会ったんだよ」 なにかって、ただお風呂入ってただけだし。 それよりも・・・ 「渉?」 「あ?」 「なにか怒ってる?」 「・・・怒ってねぇ」 それは嘘。 先程からの不機嫌な話し方。 そして、一度も私と目を合わせようとしない渉は、絶対何か怒っていた。
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