エピソード2

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「優?」 「わっ」 渉が出て行ったリビングの扉を、じっと指の隙間から見つめたまま、固まっていた私の目の前に京さんの顔が現れる。 「手、どけろよ」 「・・・無理」 今更だが、自分がスッピンだと気づいてしまった以上恥ずかしい。 「化粧なんかしなくたって、優は可愛い」 耳元で囁かれる低い声。 「手、どけろ」 この人の声には目に見えない力がある。 その低い声で囁かれると刃向かえない。 顔を隠していた両手を少しずつ退かしていく。 「優」 徐々に近づく京さん。 ゆっくりと唇が重なった。 「さっき、何を考えてた?」 「え?」 唇が離れた瞬間、京さんが尋ねてきたが何のことなのかいまいち分からず首を傾げた。 「扉見ながら何か考えてただろ?」 どうやら京さんは、渉が出ていった後のことを言っているらしい。 私は正直に答えた。 「渉が、いつもと違うなって」 そう答えた瞬間、背中に回された京さんの腕にぐっと強く引き寄せられた。 「俺といる時は他の男の事なんか考えるな」 頭上から聞こえる京さんの声。 その声に顔をあげた瞬間、再び唇が重なり合った。 「んっ・・・ふっ・・・」 さっきのキスとは比べ物にならない程の甘い、深いキス。 「返事は?」 「うっ・・・んぁ」 息が上がってしまう私とは反対に、余裕の京さん。 「優、愛してる」 私の頭、心は着々と京さんに犯されていく。 私の全てが、貴方に・・・。
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