エピソード2

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ゆっくりと唇が離れる。 部屋に響く私の呼吸。 息を整えながら目を少し開ければ、真っ直ぐに私を見つめる漆黒の瞳。 この人は狡い。 この瞳で見つめられれば。 「優」 この声で名前を呼ばれれば。 私が貴方以外考えられない事を知っている。 私は自分の腕を京さんの背中に回し、ギュッと強く抱きついた。 抱きつく私の頭を、京さんは優しく撫でてくれる。 それがとても心地よい。 「優」 「ん?」 「風呂、貸してくれ」 「えっ!?」 京さんの言葉で現実に戻された。 お、お風呂!? 「事務所から直接来ちまったから、シャワー借りてぇんだけど」 あ、そういう事! 「どうぞ!どうぞ!」 一人慌ててしまった自分が恥ずかしくなった。 「一緒に入るか?」 「へっ!?」 いきなり耳元で囁かれる。 一瞬にして顔に熱が宿った。 「ははっ、嘘だ。優も用意済ましといてくれ」 そう言うと、京さんは立ち上がった。
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