エピソード2

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「淳、そのぐらいにしとけ」 玄関の奥から聞こえるもう一つの声。 「来たか、優」 低く掠れる声で私の名を呼ぶ。 視線をそちらに向けると、艶やかな黒髪を後ろに流したスーツ姿の男性が立っていた。 どことなく渉に似た瞳。 その瞳と視線が重なった瞬間、その人の口角が上にゆっくりと上にあがった。 「おい、なんて顔してんだ」 「賢パパ・・・」 またしても涙がこみ上げてくる。 「淳、あんまり優を虐めるなよ」 「あら失礼ね!虐めてないわよ。説教してたの!」 「・・・ごめんなさい」 久しぶりの再会は謝ってばかりだった。 本当は、「ありがとう」を伝えに来たんだけど・・・。 「淳さん、あまり優を虐めないでやって」 淳ママの勢いに圧倒されていると、今まで黙っていた京さんが口を開いた。 「だから虐めてないわよっ!」 淳ママが物凄い勢いでこちらに振り向いた。 ひぃっ!! その表情は鬼のようだった。 「・・・あら、京いたの?」 「姐さん、ずっといましたよ」 葵兄が困ったように呟く。 「あらやだ、気づかなかったわ」 「相変わらずだな、淳さん」 今になって気がつく。 京さん、淳ママの事知ってたんだ・・・。 ってか忘れてたけど、ここにいる皆は極道。 藤堂組は元々淳ママの家だから、知ってて当然か・・・。 私は一人考え事をし、納得していた。 「おい、いつまでそんな所で話してんだ」 いつの間にか一人家に入っていた渉の登場により、私達は家の中にお邪魔する事になった。
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