エピソード2

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皆の視線が自然と賢パパに集まる。 「あ?何見てんだ」 「賢さん、私聞いてないんだけど」 淳ママの不機嫌そうな声が響く。 「なにを?」 賢パパはさっきまでの話を聞いていなかったのだろうか。 楽しそうな声が消え、微妙な空気が流れる。 「何って、京と優の事よ!」 「あぁ、それか」 賢パパは手に持っていた箸を一旦置き、代わりに煙草を指に挟んだ。 すかさず葵兄が火を差し出す。 「優が京の女になったらしい」 吸い込んだ煙を吹き出しながら呟く賢パパ。 渉のため息をつく声が聞こえた。 「それは、京から聞いたわよ!」 「そうかそうか・・・何怒ってんだ?」 「なんで私に教えてくれなかったのよ!」 「いや、料理だなんだので忙しそうだったからよ」 どうやらテーブルに並ぶ料理は、淳ママが作ってくれたようだ。 どれも全て美味しそうで、私の好きな物ばかりだった。 「まぁ、いいじゃねぇか!優も戻ってきたし、幸せそうならそれで・・・」 「良くないわよ!京は極道。龍神会の若頭なんだよ!」 「おい、淳」 低く冷たい声が静まり返った部屋に響く。 会ってからずっと笑顔でいた賢パパがいなくなった。 「淳、今俺らを侮辱したか?」 今そこにいるのは、鋭い目をしたヤクザの組長だった。
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