エピソード2

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「優ちゃん、着いたで」 秀さんの言葉と共に、車が止められた。 窓から見えたのは高層マンションの大きな入口。 どうやら、一緒に住む所は京さんの実家ではないらしい。 少し安心した。 賑わう繁華街とは目と鼻の先にあるようだ。 「行くぞ」 「は、はいっ!」 未だご機嫌ななめな京さんに続いて、秀さんが開けてくれたドアから足を出した。 ここで私はある事に気付く。 あれ?・・・ない!! 車に乗せたはずの、あるべき物が無くなってることに気がついた。 「どうしたん?」 中々降りようとしない私を、秀さんは不思議そうにのぞき込んできた。 「・・・ない」 「ん?なんか忘れ物したん?」 「に、荷物が無いんです!」 今私が乗ってきた車は、運転手は違えど京さんが乗ってきた車のはず。 トランクに乗せきらなかった荷物は、確かに後部座席に乗せた。 それが・・・ない。 ぬ、盗まれた!? バックには下着や着替え、大切な両親の写真が入ってたのに! 「あぁ」 「それならもう部屋に運んであるで?」 一人パニックになる私をよそに、冷静な二人。 「・・・え?は、運んだ?」 「そうや。大量の荷物は部屋においてあるわ」 「そ、そうですか」 てっきり盗まれたと思っていた私は安堵した。
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