エピソード2

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「・・・優」 目の前に京さんの手が差し出された。 その手にそっと自分の手を乗せ、京さんに引っ張り出される形で、車から降りる。 前を歩く秀さんの後ろを、京さんに肩を抱かれながら歩き始めた。 ふと視線をマンションの入口に向けると、そこには黒づくめの男が二人姿勢よく立っていた。 だ、誰!? 決して真面目な人には見えない二人。 見た感じはまだ若そうだ。 私たちが近くまで歩いていくと、「お疲れ様です!」と、二人は揃って頭を下げた。 「お前ぇら覚えとけ、優姐さんや」 「はい!」 「ん?姐さん?」 「お初にお目にかかります」 目の前で腰を折る二人。 私の呟きは誰も聞こえなかったのか、流されてしまった。 「優ちゃん、コイツ等の顔覚えたって」 そう秀さんに言われ、目の前に立つ二人を恐る恐る交互に見る。 「田崎です」 そう名乗った男は、両サイドの髪の毛を剃り、少し長めの黒髪を後ろに流すようにセットした長身の人。 うん。顔は整ってるけど厳つい。 こうして紹介されなければ、絶対に近づかない。 もう一人は・・・。 「永井です」 この人もヤクザなのだろうか。 特徴の有り過ぎる髪型に驚愕する。 なんたって、ドレッドなんだもん。 黒いスーツ、まるで似っていない。 なんとも言えない違和感を感じた。 「覚えたか?」と京さんが私の顔をのぞき込む。 「うん!」 目の前では言えないが、ノッポさんとドレッドさんで覚えることにした。 二人とも特徴があってよかった。 「コイツ等がここにおること多いから」 「はい!宜しくお願いします」 「うっす」 爽やかな笑顔を向けてくれる二人。 あまり悪い人達ではなさそうだ。 「行くぞ」 京さんに肩を抱かれ再び歩き出す。 目の前にそびえ立つ高級そうなマンション。 白を基調とした外観を、オレンジライトが下から照らし出していた。 ・・・『白』・・・。 一瞬、身体が強ばってしまった。 白は・・・、嫌い・・・。 「どうした?」 ほんの一瞬の事だったのに、どうやら京さんは私の異変に気がついたようだ。 「・・・なんでもないよ」 私は笑顔を浮かべ、そのまま前へと進んで行き、白い建物へと足を踏み入れた。
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