エピソード2

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「・・・凄い」 私は思わず声を漏らす。 京さんの部屋に入るまでの道のりは驚きの連続だった。 厳重なセキュリティが施された入口。 エレベーターで押された階は最上階。 最上階には二つの部屋しか無いらしく、ひとつは京さんの部屋、もうひとつは龍神会の方たちが寝泊りする部屋らしい。 案内された京さんの部屋は、半端なく広かった。 「優ちゃん、そこに座っといて」 自分の部屋のように振舞う秀さん。 リビングにある、高級そうな黒い大きいソファーにそっと腰を下ろす。 私の隣には、京さんが座った。 私は部屋の中をぐるりと見渡した。 大きなテレビ、お洒落な家具。 部屋中綺麗に整頓され、埃ひとつ無さそうだ。 室内は黒かグレーに統一されていて、暗い印象は受けるが、なんとなく京さんに合っている感じがする。 なにより白が少ない分、私自身落ち着く部屋だった。 「どうぞ」 部屋の中をひと通り見回した所で、テーブルに何かが置かれた。 「ありがとうございます」 どうやら、秀さんがコーヒーを入れてくれたらしい。 「秀、後はもう下がっていい」 ポケットから煙草を取り出し、火をつけた京さんが呟く。 「あぁ?俺はもうちょっと優ちゃんと・・・」 「秀」 低い声を出す京さん。 となりからひしひしと伝わる空気。 この瞬間確定した。 京さんはかなり怒っている。 「はいはい、邪魔者は消えますよー。またな、優ちゃん。何かあったら、呼ぶんやで!」 秀さんは手をひらひらと振りながら、京さんの部屋を去っていってしまった。
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