エピソード2

33/43
前へ
/224ページ
次へ
秀さんが出ていった事により、私と京さんの二人きりになった室内はとても静か。 静かすぎて気まずい。 そもそも京さんが怒っている理由が分からない。 とても気まずい空気が流れる。 ど、どうしよう・・・。 「優」 「ひゃいっ!」 煙草を灰皿に押し付けながら、私の名を呼ぶ京さん。 唐突に名前を呼ばれ変な声が出てしまった。 「・・・わりぃ」 そんな声と共に、身体が京さんの温もりに包まれる。 「そんなビビんなよ」 耳元で囁かれる声。 その声はいつもの優しい声に戻っていた。 「優が、他の男と話してるのを見るだけでどうしようもねぇくらい腹立つんだ」 私を抱き締める腕に力がこもる。 「・・・京さん」 「殺してやりてぇくらいムカつくんだ」 「ッ!」 ドスの聞いた低い声に鳥肌が立つ。 「ご、ごめんなさい!」 「・・・わりぃ。優が謝る事じゃねぇ。俺自身こんな感情初めてで、どうしたらいいか分かんねぇんだ」 そう弱々しく京さんは呟いた。 「そ、それって・・・ヤキモチ?」 恐る恐る尋ねる。 「そーかもしんねぇな」 笑いながら言う京さん。 「・・・私も一緒だよ」 私はそう京さんの耳元で伝えた。 この暖かい腕を、どれ程の女性が知っているのだろう。 低く甘い声で、どれ程の名前を呼んだのだろう。 どんな甘い言葉を囁いたのだろう。 私の知らない京さんを知ってる人がいる。 そう思うと、嫉妬で狂いそうになる。 「・・・京さん。私は京さんが・・んッ!?」 言葉を紡ぐ唇が塞がれる。 熱く、甘く、深い口付け。 何も考えられなくなる。 「優、愛してる」 頭に木霊する京さんの声。 「んあっ、・・・ッ」 言葉を発したくても、口内を侵食する京さんの舌が許してくれない。 だから私は甘く痺れる体で、ギュッと京さんに抱きついた。 『私も愛してる』という、気持ちを込めて・・・。 優しく髪を撫でながら私の名を呼ぶ京さん。 私を包む温もりと、ムスクの匂い。 人と触れ合う事がこんなにも落ち着く事を初めて知った。 「・・・優」 「ん?」 髪を撫でる手が止まる。 私は京さんの肩に埋めていた顔を上げた。 「・・・見せておかなきゃならねぇ物があるんだ」 真っ直ぐに私を見つめる漆黒の瞳と、少しだけ低くなった声に私の鼓動が速くなる。 「風呂行くぞ」 「へっ!?」 急に身体が浮き上がる。 どうやら京さんにお姫様抱っこをされているらしい。 「ちょっ!京さんっ!?」 急な展開に頭が追いつかない。 なぜにお風呂? 見せるって何? 私、何されるの!?
/224ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4437人が本棚に入れています
本棚に追加