エピソード2

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「イヤーーーーッ!!」 私の叫びが浴室に響く。 一枚のバスタオルのみ纏った私を、再びお姫様抱っこする京さん。 「暴れっと見えるぞ」 「きゃーーーーッ!!」 胸元のタオルを両手でギュッと掴む。 「煩せぇ」 「んなっ!」 なんでこんな事になってるかと言うと・・・。 『風呂入るぞ』 京さんのこの一言から始まった。 激しいキスのせいで力が抜け、京さんに預ける私の体。 頭上から聞こえたその声に、浴室から出ようとグッと足に力を入れる。 「どこ行くんだ?」 少し離れた私の体を京さんは再び抱き寄せた。 「だって京さんお風呂入るんでしょ?」 「あぁ」 「じゃあ、私リビングで待ってるよ」 「あ?優も一緒だ」 そう言いながら私の服を脱がしていく京さん。 「・・・。えぇーーッ!?」 気づいた時にはもう下着のみの姿になっていた。 慌てて近くに置いてあったタオルで体を隠す。 「何してんだ?」 「な、何って、なんで服脱がすの!?」 「服脱がねぇと風呂入れねぇだろ」 「そうじゃなくて!なんで一緒に入るの?」 「あ?」 京さんの眉間にシワが寄っていく。 「入らねぇのか?」 私を見つめる鋭い視線。 「・・・入ります」 京さんの押しに負け、そう応えてしまった。 私の応えを聞いた京さんは笑顔を浮かべ、再び私に手を伸ばす。 「じ、自分で脱ぐからっ!」 下着まで脱がそうとする京さんを止め、タオルを体に巻くと残った下着を脱いでいった。 「別にこの後見るんだから、恥ずかしがることねぇだろ」と呟く京さんの声は、聞こえなかった事にした。 「・・・広い」 京さんに抱えられたまま湯船に入る。 京さんの家のお風呂はとても広かった。 湯船も二人入っても全然余裕なぐらいに。 「熱くねぇか?」 お湯の中で私の腕を撫でる京さん。 浴室に響く水音。 密着する素肌に恥ずかしくなる。 「うん、大丈夫」 私はふと京さんの腕に触れた。 体中に描かれた模様。 拓真とは違う和彫り。 少し擦ってみたが、やはり落ちない。 恥ずかしくてあまり見ていないが、背中、腕、脚にと京さんは体中に刺青が入っている。 でも不思議と怖いとは思わない。 私自身、刺青に対しての偏見はない。 多分、幼い頃から刺青が入っている人達を見てきたからだと思う。
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