エピソード2

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「痛くなかった?」 私は右腕に描かれた般若を撫でながら、京さんに問いかけた。 「痛くねぇ事はねぇけど、まぁ我慢できるぐらいだ」 「そう」 「秀は喚いてたけどな」 あの秀さんが? 私の勝手な印象だが、秀さんが痛みで喚く姿が想像出来ない。 よほど痛いのだろう。 「私じゃ無理かな・・・」 「ん?入れてぇのか?」 小さく呟いた筈が、近くにいる京さんには聞こえていたようだ。 「勧めはしねぇが、もし本当に入れてぇならよく考えろ。そして必ず俺に言え」 「うん」 私はそっと頷いた。 「飯、どうする?」 「ん?」 「腹減ってるか?」 「・・・全然」 どうやら京さんは夕御飯の事を言っているみたいだ。 さっき渉の家で淳ママの手料理をご馳走になったおかげで、お腹は空いていない。 むしろお腹がヤバいぐらい出ている。 タオルで隠しててよかった・・・。 「京さんは?」 「俺も腹は減ってねぇけど」 「けど?」 「飲み足りねぇ」 「え?」 渉の家であんなに飲んでたのに!? 昼間からずっと淳ママと飲み比べをして、かなりの量を飲んでいたように見えたが、どうやら京さんには足りないらしい。 「外出るのと、家、どっちがいい?」 「家!」 元々インドア派な私は即答していた。 だってお風呂の後はゆっくりしたいもん。 用意するのだって面倒・・・!? そこで私は重要な事に気がついた。
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