エピソード2

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化粧落としてない! ってか、メイク落とし荷物の中じゃん! 京さんに無理やりお風呂に連れ込まれたため、お風呂用品は全てバックの中。 取りに行きたいが、今お湯に浸かっている私は、体に巻き付けたタオルを含めびちゃびちゃ。 どうしよう・・・。 「どうした?」 急に悩み出した私を心配そうに覗く京さん。 丁度良い湯加減とはいえ、顔に汗が滲んできたから、あまり近くで見てはほしくないんだけど。 「私のお風呂用品、荷物の中なの」 私はなるべく顔を見せないように、俯きながら答えた。 「あぁ、そこにあるの使え」 京さんが指した先にはシャワー台が。 そこには綺麗に並べられたボトルなどが多数置かれていた。 「・・・あ」 目を凝らして見てみると、本来京さんには必要無い物まで置かれている。 なんであるの? それが目に映った瞬間、胸が苦しくなった。 私の目についた物。 それは私が今欲していた、メイク落としだった。 「どうした?」 「・・・京さんって、化粧するの?」 私はメイク落としを見つめたまま、恐る恐る尋ねた。 「あ?するわけねぇだろ」 京さんは呆れたように答えた。 じゃあ・・・。 京さんはかっこいい。 私の前に女の人がいたという事は承知している。 けれど、それを目で見て実感してしまった瞬間、胸が締め付けられた。 「・・・なんでメイク落としがあるの?」 私は痛む胸を押さえながら京さんに振り向いた。 「優、泣くな」 グッと京さんの胸に抱き寄せられる。 「あれは、田崎達に用意させた」 京さんが静かに話始めた。 私は京さんの胸にもたれ掛かったまま耳を傾ける。 「田崎さん?」 「あぁ」 田崎さんって、確かさっき入口で会ったノッポさん・・・。 「優と暮らす事が決ってすぐ、女に必要なものすぐに用意しとけって言っておいたんだ」 「・・・そうだったんだ」 「他の女のじゃねぇし、ましてや俺が使う物でもねぇ」 「うん」 京さんの言葉に、心が少しずつ落ち着いていく。 「言っておくが、俺の部屋に入った女は優が初めてだ」 「え?」 これには驚いた。 「私が、初めて?」 「あぁ」 顔を上げれば、京さんの瞳と目が合った。
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