エピソード2

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「なっ、なんでっ!?」 慌ててずり落ちたタオルを掴み体を隠す。 なんで私、裸なの? 一人パニックに陥り、顔に熱が集中していく。 「濡れたタオルのままいられねぇだろ」 慌てふためく私の隣から、冷静な京さんの声が聞こえてくる。 「あ、あのっ!」 「ん?」 「・・・見た?」 恐る恐る、京さんの表情を確かめながらに尋ねる。 「見たって・・・何を?」 京さんは形のいい唇に弧を描きながら意地悪そうに微笑んでいた。 『何を?』って、わかってるくせに! 「私の・・・は・・裸・・・」 私は消え入りそうな声で呟いた。 「見たぜ、全部。・・・綺麗だ」 その瞬間心臓が音を立てながら動き出す。 恥ずかしい気持ちが大きいが、そう言われて嫌な気持ちはしなかった。 「あ、あの!」 「ん?」 「・・・お風呂貸して?」 「あ?また入んのか?」 「うん」 京さんに背を向けたまま頷く。 入ったと言っても湯船に浸かっただけで逆上せてしまい、何もできていない。 「・・・仕方ねぇな」 「えっ!?」 グイっと抱え上げられ宙に浮く体。 「ちょっ、京さん!」 「一人じゃ危ねぇから入れてやるよ」 「なっ!一人で大丈夫だよ!!」 「また逆上せたらどうすんだ」 一緒じゃなきゃ大丈夫なのに! 大丈夫だと何度も繰り返し言う私の言葉は完全に無視され、私はそのまま浴室へと連れられて行かれた。
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