エピソード2

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京さんの近くまで行くと、ドアノブに手をかけひとつの部屋を開けた。 「あ!」 落ち着いたオレンジ色の灯る室内。 そこには見覚えのあるスーツケースとバックが置かれていた。 「中身は誰も見てねぇ。とりあえず片付けはあとにして、必要なのだけ持って来い。リビングで待ってる」 「うん」 京さんが離れて行ったのを確認してバックを開けていく。 とりあえず服着なくちゃ。 バスタオルを外しパジャマ様にと用意してきたルームウェアに着替えた。 うわ、凄い・・・。 服を着て少し心に余裕が出来たのか、通された部屋を見て驚く。 どうやらひとつの部屋をクローゼットとして使っているようだ。 何着もの高そうなスーツと靴がズラリと並び、私服なのだろうと思われる服も綺麗に陳列されている。 もはや立派な洋服屋さんだ。 「優、どうした?」 「っ!!」 部屋に気を取られ、京さんが後ろに立っている事にもまったく気づけなかった。 「具合悪いのか?」 「だ、大丈夫!」 すっと立ち上がり、京さんの待つ扉へと急ぐ。 「京さん、お酒飲むんだっけ?」 「いや、今日はもういい」 あれ?さっき飲み足りないって・・・。 「優はもう休んだ方がいいだろ」 どうやら京さんは私の体を心配してくれているらしい。 「私、もう大丈夫だよ?」 フラフラしていた頭も落ち着き、今は普通の状態に戻っている。 「いや、考えてみりゃ明日は学校だろ?」 「はっ!!」 京さんに言われるまですっかり忘れていた。 休日は今日で終わりで、明日から学校だという事を。 「なんだよ、忘れてたのか?」 「う、うん・・・」 私は休みに入る前の事を思い出していた。 龍神の暴走に行くために、校門で黒塗りの車に乗り込む私を多くの人が目撃していたはず。 もしかしたら、京さんとの事も広まってるかも知れない。 いったいどんな噂が広がっているのだろう。 それを考えると明日からの学校がとても憂鬱に思えてきた。
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