番外編

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「お前だけ行ったら、渉に迷惑かかるだろうが」 「おい!俺だけ行ったら迷惑かけるって、どーいう意味や!」 京の失礼な発言に、俺は思わず立ち上がった。 「そういうのだ」 京は両手で耳を塞ぎ、眉間にシワを寄せ俺の事を睨みながら呟いた。 「はぁ?どういう事だよ!」 「煩いし、すぐ熱くなるし、すぐ調子に乗る。誰がお前を止めんだよ」 「・・・」 俺は静かにソファーに腰を下ろした。 「それに、お前が行って俺が行かねぇんじゃ格好つかねぇ」 そう言うと、京は耳から手を離し、テーブルに置かれた煙草へと手を伸ばした。 「・・・お前、俺の文句言いたかっただけだろ」 俺の呟きに、京は片側の口角をあげ怪しく微笑んだ。 少し考えれば、頭の悪い俺にだってわかる事。 いくら面倒くさがりやで、物事に興味を示さない京でも、『龍神』の事になれば話は別。 今は『龍神会の若頭』という名を背負っているものの、少し前まで『龍神五代目 総長』という二つの肩書きを京は持っていた。 龍神暴走連合会は昔から、龍神会と深い関わりがある。 元々京の父親である、現龍神会組長が立ち上げたもの。 俺たちにとって龍神はとても身近なものであり、これこらも付き纏う影だろう。 そして『龍神連合会 六代目総長』の渉は弟のような存在。 その渉の就任祝いの暴走に、京が『行かねぇ』って言うわけが無かった。 『キンッ』 なんの音も聞こえない部屋に、金属が鳴く音が響く。 京が口に咥えた煙草に火を付けるため、Zippoの蓋を開けたようだ。 京の手の中でシルバー色に輝くZippoはには、蝶の模様が彫られている。 数あるZippoの中で、今はそれがお気に入りのようだ。
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