番外編

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基本、京は自分の大事なモノを他人に貸すことを嫌がる。 その証拠に__ 「おい、それ貸してくれ」 俺はポケットから煙草を出し、口に咥えながらテーブルの上に光るZippoを指差した。 「・・・嫌だ」 京は煙草の煙をゆっくりと出しながら、口を開いた。 ほら! 「なんでや!ライターぐらい貸してくれてもいいやん」 Zippoを指さしながら、少し抵抗をしてみる。 「嫌だ」 先程よりもはっきりした口調で返事が帰ってきた。 「俺、どうやって火付けたらいいん?」 「・・・」 俺の声が聞こえてない筈がない。 しかし、京からは何の返事も返ってこなかった。 「もういいわ」 俺は口に咥えた煙草を指に挟み直し、ソファーから腰を上げた。 「7時には出るからな」 「あぁ」 京は灰皿で煙草をもみ消すと、黒い大きなソファーの上に横になった。 「7時になっても起きんかったら置いてくからな!」 今から仮眠をとろうとする京に忠告する。 京の寝起きの悪さといえば最悪だ。 予定の一時間前に起こしにかかっても、大抵間に合わない。 6時になったら起こしにくるか・・・。 次第に聞こえ始める京の寝息。 俺は足音が鳴らないように、ゆっくりと扉に向かって足を進め京の部屋を後にした。
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