番外編

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『キンッ』 Zippoの音が響く。 京が煙草に火を付けたようだ。 煙草の匂いが鼻を掠める。 「渉、あの可愛子ちゃんたち誰の連れなん?」 俺は気になっていた事を煙草に火を付けながら渉に尋ねた。 「あぁ、一人は俺の連れです」 渉はそう言うと、一人の名前を口にした。 「優!こっち来い」 名前を呼ばれた子がこちらに振り返る。 どうやら、キャラメル色の髪をした子が渉の連れのようだ。 優ちゃんっていうんか・・・。 優ちゃんはこちらに振り返ったまま、その場に立ち尽くしている。 少し葵さんと何か話したかと思うと、こちらに向かって足を進めだした。 優ちゃんと葵さんが、少しずつこちらに近づいてくる。 ふと視線を京に向けると、口元に弧を描きながらジッと優ちゃんを見つめていた。 ・・・なんや、珍しいな。 京が女に興味を示すなんて初めてだ。 京は龍神会の一人息子としてこの世に産まれてから注目をうけてきた。 そのうえこの容姿のもんだから、寄ってくる女は腐るほどいる。 女に不自由の無い生活をしてきた俺等は、失礼な話だが女を消耗品のような扱いしかしてこなかった。 一度抱いた女を、二度抱く事はない。 それでも自分が特別な存在になりたいと、希望を抱く女が後を絶たない。 けれど京自身、特別な女を作る気は全然ないようだった。 しかしそんな京が、今こちらに歩み寄る女に興味を持っている。 俺は一人驚いていた。
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